生命の動き
妊娠中の妻のお腹を初めて触ったときのことである。最近、胎児がお腹を蹴り始めたというので妻のお腹を触らせて貰ったのである。膨らんだお腹の指定された辺りを恐る恐る触ってみる。触り始めてすぐに
「ポコっ」とお腹が動いたのである。
妻と私でそのタイミングの良さに顔を見合わせて驚き、私はその微妙でありつつも全く機械的でない生命感溢れる動きに感動したのだった。
妊娠中の妻のお腹を初めて触ったときのことである。最近、胎児がお腹を蹴り始めたというので妻のお腹を触らせて貰ったのである。膨らんだお腹の指定された辺りを恐る恐る触ってみる。触り始めてすぐに
「ポコっ」とお腹が動いたのである。
妻と私でそのタイミングの良さに顔を見合わせて驚き、私はその微妙でありつつも全く機械的でない生命感溢れる動きに感動したのだった。
妻が妊娠8ヶ月である。7ヶ月のときの検診で初めて逆子状態になっていることが発覚する。この頃は出産予定日までだいぶ日数があるので心配ないと言われていた。それ以降妻が逆子体操などで対応した結果、2週間後の検診では元に戻っていて一安心。しかしその2週間後の検診ではまた逆子状態に逆戻りしていたのである。こうなると赤ちゃんはお腹の中で2週間の間に何回転しているのか分からなくなってくる。
この再度逆子になっていることが発覚したときの検診時は既に妊娠29週目だった。逆子が直るならこの週くらいまでだそうだ。この後は羊水の量が少なくなって逆子が改善されにくくなるのである。
このまま逆子状態だと帝王切開での出産になってしまう。妻は痛くないので帝王切開での出産でも良いかという気持ちもあるにはあるようだ。しかし逆子状態を改善して通常分娩で出産したいという思いの方が強いようである。私にしてみれば無事に産まれてくれればどちらでも良いのだが、帝王切開だと追加費用が発生するので逆子が直るなら直った方が良いのかなと言う気持ちである。
妻が妊娠8ヶ月になり年末に出産を控えている。そこで妻おすすめの『大丈夫やで』という本を読んだ。
大丈夫やで ばあちゃん助産師のお産と育児のはなし [ 坂本フジヱ ]
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助産師のおばあちゃん先生が書いた本である。妊娠中から出産後、子供が1歳を超えるまでのことについて順を追って説明されている。実践的なことから精神的なことまで話題は様々である。例えば新生児の頃の章で説明されていた赤ちゃん体操だとか肩枕を我が家でも実践したのである。
この本によると冷えが妊婦の最大の敵だと言う。足の内側のくるぶしの一番高い所から指四本分上に「三陰交」というツボがある。女性特有の病気のほとんどはこのツボが冷えることで起こるという。
さっそくこの三陰交を温めるべくドラッグストアへレッグウォーマーを購入しに行く。可愛い絵柄入りのものもあったのだが機能性を優先して購入。税抜き398円。値段の割には高性能で妻曰く暑いくらいだということである。冷えが逆子の原因にもなるので暑いぐらいが適温なのではないだろうか。
妊娠7ヶ月の妻が出産前後に必要なものを揃えに買い物に行ってきた。妻の母親と一緒に買い物をして色々と買って貰ったそうである。部屋の中にずらりと並べられた育児用品を見ていると段々と間もなく親になるのだという実感が湧いてくる。以前はそこら辺を歩いている子供を見ても何とも思わなかったのだが、最近では他所の家の子供まで可愛く見えてくる有り様である。
買って貰った育児グッズの中で妻の一番のお気に入りが熊の顔をデフォルメした赤ちゃん用の帽子である。冬用なので生まれた直後に頭が寒くないようにということだろう。妻の好みがこうも変わってしまうとはなかなかの驚きである。
妊娠7ヶ月の妻のお腹がかぶれたようにかゆくて仕方がないという。その影響で夜の睡眠にも影響が出ている。数日我慢している間に定期検診の日になった。この時の検診には私は仕事で同行出来なかった。
検診のついでに診察を受けたところやはり原因不明の妊娠性痒疹だったようである。だいぶ弱めのステロイド剤を処方して貰う。効果が出なければ再度受診するように言われる。案の定この塗り薬は3日間ほど使ってみても効き目がない。
土曜日に私も同行して産婦人科へ行く。予約なしでの通院だったので1時間ほど待ち時間が発生した。今度は前回よりも強めのステロイドホルモン剤を処方される。これで1週間以内に効果が出なければ皮膚科へ行くようにと言われる。
妻が妊娠7ヶ月で出産予定日が今年の年末の大晦日である。赤ちゃんの性別がほぼ判明したので名づけの本を2冊購入した。今から夫婦で子供の名前を考え始めるのだ。とりあえず届いた片方の本を読み終えたので実際に名前を考え始める。
幸せの扉をひらく赤ちゃんの名前事典 [ 朝日新聞出版 ]
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生まれてくる赤ちゃんは男の子なのだがまだ女の子の可能性も全くゼロではない。念のため男女双方の名前を考えることにする。まずは男女それぞれ5つずつほどの候補に絞る。その上で実際に生まれてきた子供の顔をみてしっくりくる名前に命名するのだ。
出生届は出産後14日以内に提出しなければならない。ただでさえバタバタするのが目に見えている時期なのにいざ名前が決まらないとなるととんでもないことである。今のうちから万全の準備を整えておきたいものである。書類不備や名前に問題があったりすると出生届が受理されないこともあるのであまりギリギリの提出は避けたい所だ。
妊娠7ヶ月の妻の胎教のために買った絵本が『しろいうさぎとくろいうさぎ』である。
しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ) [ G・ウィリアムズ ]
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絵も綺麗で切れ味のある単純明快なストーリーだ。何度か妻のお腹へ向けて読んでいたのだが流石に飽きてくる。大人になって絵本など読んだことが無かったのであまりにも短い話と少ない文字数に慣れることが出来ない。
この4ヶ月ほど後のことだが息子が無事に生まれてまだ妻の実家にお世話になっている頃である。まとめて絵本を10冊ほど購入する。その後も月に2冊のペースで絵本を新しく増やしている。今でも息子の毎晩の入浴前に絵本を読んでいる。
これだけ絵本を読むと絵本の絵本であることの宿命の片鱗にちょっとだけ触れた気分になる。0歳児向けの絵本などは絵しかないケースもある。しかしまだ妻のお腹に向けて胎教がてらと暇なときに読んでいるだけである。この頃の私には本物の絵本がまだ退屈だった。
妊娠7ヶ月目の妻が眠れなくて困っているという。妊娠に伴い仕事を休んでいて以前ほど体を動かさなくなった影響もあるようだ。また私のいびきと歯ぎしりがうるさくて眠れない日もあるという。どちらにせよ妊娠初期の頃は良く眠れていたので妊娠後期に入ったことが一番の原因なのである。
また私のいびきがおさまったと思ったら次はお腹の赤ちゃんがもぞもぞと動き出すという相乗効果も生まれているそうだ。充分に睡眠を取らないと子供の成育に良くないというプレッシャーがさらに妻の睡眠不足に拍車をかけている。妊娠中でトイレが近くなっていることやお腹が大きくなってきて寝返りが出来なくなっていることなど睡眠を妨げる要因も目白押しなのである。
妻が妊娠7ヶ月目でようやく赤ちゃんの性別が判明した。そこで名前の候補を考え始めることにする。ネットで名前を入力すると画数から姓名判断できるサイトがあるのでいろいろとやってみる。のだがサイトの種類も様々でなかなかピンとこない。どうやら姓名判断にもそれぞれ流派があるようなのだ。埒が明かないので結局は名付けの本を購入することにしたのだった。
幸せの扉をひらく赤ちゃんの名前事典 [ 朝日新聞出版 ]
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ふたりで名づける赤ちゃんの名前 新人名漢字入り [ 田中眞人(詩人) ]
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という訳で本が届くまでは命名の儀は一旦保留ということになったのである。
妊娠7ヶ月目の妻の定期検診で子供の性別がほぼ判明する。私の母親に赤ちゃんの性別が分かったら報告するように言われていたので連絡を入れる。男の子であると思われることを伝えると”やはり”という反応だった。
自分の身の回りに男の子しかいないのでそんな気がしていたということである。後出しなので何とでも言えるのだが、”やはりそんな気がしていた”と”だと良い”と思っていたというのでは随分違う。結局は本音が不明なのだが、軽々しい発言をしないあたりが年の功ということなのだろうか。
今日は妊娠7ヶ月目の妻の検診だった。前回の検診では赤ちゃんが足を閉じていてまだ性別が分からなかったのだが今回は判明するはずである。車の中で待ちわびて待っていると妻が戻ってきていよいよ検査の結果が知らされる。検査の結果、男の子ではないかということだった。
“ではないか”とはどういうことなのかと妻に確認したのだが、医者は”ではないか”としか言わず断定しなかったそうだ。確かに生まれて来て性別が逆だったということもある話なので確実だとは言えないのである。
この会話の後で私がしばし無言になったということが妻を傷つけていた。もともとは私の女の子が欲しいという発言が原因である。私が不服とまでいかずとも若干残念がっていると妻は思ったようである。
“行動なき祈りは妄想、祈りなき行動は”暴走”” の続きを読む
妻が妊娠7か月目に入る。胎教のために購入した絵本『しろいうさぎとくろいうさぎ』が届く。ひとまず妻のお腹に向けて音読してみる。のだが驚くほど早く話が終わってしまう。絵本を読むということが久しぶり過ぎるのだ。何となく手持ち無沙汰な感じである。もうそろそろ終わりなのかなと思って朗読していると、実はそのページで終わりだったというあっけなさだ。
妻と二人で話した感想はこの話には”起承転結”が無いということだった。そうは言っても絵本はこれしかないので翌日もお腹の子供に向けて読み聞かせを行う。慣れてくると実はストーリーにしっかり起承転結があることに気づく。
白うさぎと黒うさぎが仲良くいつも遊んでいる。
黒うさぎの様子がおかしく何か考えているらしい。
白うさぎが何をそんなに考えているのか聞く。
黒うさぎ「君とずっと一緒にいたいんだ!」
二匹のうさぎの結婚を森の動物たちが祝う。
妊娠5ヶ月を過ぎると胎児に外部からの音が届いているという話である。そこで妊娠6ヶ月の妻の胎教のために絵本を購入する。『しろいうさぎとくろいうさぎ』という絵本である。
しろいうさぎとくろいうさぎ (世界傑作絵本シリーズ) [ G・ウィリアムズ ]
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候補は複数あったのだが動物好きの妻の意見を採用したのだった。妻はこの本の綺麗な絵を気に入ったようである。妊婦がリラックスして読めて聞けるという点が胎児にとっても重要なので妻の意見を最優先にしたのである。
この絵本の対象年齢は4歳~5歳なので実際に子供に読めるのはだいぶ先になりそうだとこの頃は思っていた。しかし今では気にせずに1歳前の息子に読み聞かせている。絵本の中のうさぎに指先でタッチして遊んでいるので何らかの効果はあるのだろう。
妊娠6か月の妻を産婦人科へ連れて行く。定期検診のためである。今回の検診で赤ちゃんの性別が分かる予定である。いつも通りに妻を病院に送って私は駐車場の車の中で待っていた。今回はいつもよりも検診時間が長くちょっと心配になる。
1時間ほどで妻が戻ってきたのだが、結果から言うと今回はまだ赤ちゃんの性別は分からなかった。原因はお腹の中で赤ちゃんが足を閉じているからだ。結局、性別の判明は次の1ヶ月後の検診までのお楽しみということになった。赤ちゃんの成長については問題なく順調ということで一安心である。足を閉じて性別をうやむやにするなど胎児にしてはなかなか芸達者なものだと感心したのだった。
今日で妊娠5ヶ月の妻が産婦人科のグループ講座に参加するということで送っていく。1時間の講座で同じ出産予定日の妊婦が集まって今の子供の重さなどについて説明を受けたということである。その間いつも通りに私は近所のスーパーで朝食を買い食いしていたのだが、今回は診察ではないので精算や診察の順番待ちがある訳でなく妻はきっちり時間通りに帰っていた。
講座というかグループサロンという名目だったようで皆で座ってお茶を飲んでという感じだったそうである。出産予定日が同じくらいでも、ぎりぎりまで働く予定の人がいたり”つわり”がだいぶ酷い人がいたりと色々あるようである。妻はさほど”つわり”には苦しまなかったのだった。
サロンの話の内容だが現在の胎児の大きさについて教えてもらったそうである。今の妊娠4ヶ月目の赤ちゃんの大きさはみかんぐらいで1ヶ月もするとグレープフルーツくらいになるということだ。話の後では現在の胎児の重さの模型を実際に持ってみるという体験コーナーもあったそうだ。
妊娠中の妻と3度目の産婦人科へ行く。今日は初めてエコーの写真を貰った。真っ黒の子宮の中に白い胎児が見える写真である。10週目に入っていて既に心音を聞くことも出来たそうだ。間も無く安定期に入るということである。次の通院が2週間後でこのときに問題が無ければ双方の両親に妊娠を知らせることにする。
既に出産予定日がわかっているのだが、何と今年の年末の12月31日である。前後にずれてもクリスマスだったり元旦だったりと慌ただしい冬休み生まれの子供になるのは間違いがなさそうである。
しばらくして大問題が発生する。この検診のときに貰った初めてのエコー写真を無くしてしまったのである。妻と2人で車の中やカバンの中、家の隅々まで探し回ったのだが見つからなかった。一旦捨てられた子供は元気に育つというような話もあるのでこれはこれで良いかということにしておく。
妻に妊娠の可能性があるということで産婦人科へ行く。妊娠検査薬の精度は99.9%あるということで妊娠は確実なのだが、妊娠時期が全く不明だったので早めに産婦人科へ行ったのである。
この日の通院では妊娠は確実だが、何週目かということなどは解らず2週間後に再受診することになった。この妊娠の発覚により私は部屋の中や車内など妊婦である妻と同室での喫煙を止めることになった。遂にホタル族になったのである。そしてこの半年後に禁煙を始め、現在は1年間の禁煙に成功している。生まれてきた息子様様である。
この日から通い始めた産婦人科へ妻を連れて行って私はいつも車の中で待っていた。院内に立ち入ったのは出産当日が初めてだった。そして妻を待っている間に近所のスーパーで朝食や軽食を済ますのが習慣になっていったのである。ある日妻に発覚する迄は・・・。
また、妊娠中の飛行機への搭乗があまり良くないということで年内に予定していた新婚旅行代わりのソウルと香港&マカオ行きを中止する。また先月結婚式で行っていたグアムで応募した懸賞に当選していて年内にグアムかサイパンにご招待されるはずだったのだが、これも当選を放棄することにする。